インプラントの技術というのは各メーカー・歯科医師の努力の賜物で日進月歩しております。
ブリッジや入れ歯に比べて、かなり機能的なものといえます。
では、インプラントの弱点とは何でしょうか?
あまり語られることは無いですが、インプラントにも弱点があります。
細かく挙げるとキリが無いのですが、大きく捉えると、『歯根膜が無い』ここに集約されていくものと思います。
歯根膜とは?
歯はたてに細長い形態をしています。
そのうちの1/3(歯冠)はお口の中に顔を出していますが、根元の2/3(歯根)は骨によって支えられています。
実は歯根は、骨は直接接しているわけではなく、歯根膜という0.2ミリ程度の、薄く、やわらかいコラーゲンの膜を介して骨は歯根を支えています。
歯根膜の役割
1.クッションとしての役割
歯に加わる力を和らげて、骨や歯にダメージが出ないようにする
2.歯の感覚・センサーとしての役割
圧力などを感じるセンサーが発達しており、脳へ直接情報が届く(脳神経)
3.歯周組織としての、周囲への栄養補給
周囲の骨などに栄養を補給する
4.感染の局所化
虫歯・歯周病などで感染が歯根膜に達したときに、感染が深部に行かないようにする
5.歯根膜-咬筋反射
無意識の状態で食事中にリズミカルに咬むための反射運動
歯根膜は抜歯とともに失われます。
またインプラントは骨と直接くっつくものなので、歯根膜の働きがありません。
抜歯というのはこの大切な歯根膜が失われてしまうことです。
歯根膜が無ければインプラントがどんなに発達しても『天然の歯>インプラント』という構図は変わることはありません。
そのため、健康的な状態で歯を保存することが可能ならば、絶対に抜歯すべきではありません。
ただし、健康的に維持できない場合はその歯が感染源になってしまうので、周囲に悪影響を考えると抜歯も仕方が無い場合もあります。
もしインプラントになった場合 歯根膜が無いことへの対策
もし、インプラント治療になった場合、歯根膜がないことへの対策は十分に行う必要があります。
対策が不十分だと、インプラント周囲の骨が溶けて(インプラント周囲炎)、長持ちしないインプラントとなりやすいといえます。
対策1 可能な限り新しく、太く長いインプラントを、正しい位置・角度に入れる。
→ インプラントにかかる力の負担を減少させる
対策2 確実にオッセオインテグレーション(インプラントと骨の結合)してから、かぶせものをする。
→ 急ぎすぎて、結合前にかぶせものをすると、そのまま結合せずに、抜けてしまうことがある
対策3 かぶせもの後、定期的にかみ合わせを調節する
→ インプラントにかかる負担を、定期的にチェックする
対策4 インプラント周囲の組織(骨・歯肉)は、必要があれば増大させる。
→ 歯肉・骨の栄養不足・酸欠・免疫不全がおこらないようにする目的
以上の対策をせずに、安易にインプラント治療をしてしまうと、以下のように、インプラント周囲炎(インプラント周囲の骨が溶ける病気)になってしまうことが多くあります。
インプラント周囲の骨がかなり溶けています
(この段階でもぐらつきはありません)